前回Fusion 360のEDA機能で設計した基板を使用して、試作したモータドライバの動作をお見せしました。試作したのはモータドライバといっても、回転方向が制御できるわけではなく、回転スピードのみを変化させることができる仕様になっています。
今回はFusion 360のEDA機能で作成したモータドライバの回路図(Schematic)とボードレイアウト(PCB document)の全容をお見せして、回路図をもとにモータの動作に至るまでの大まかな流れを紹介していきたいと思います。
前回の記事:タイマICで可変速モータドライバを作る(その1)
回路図(Schematic)
下に回路図を作成する際用いた部品表と作成した回路図を示します。
参照:秋月電子通商
上図の回路を下図のように大まかに5つのグループに分類します。
赤枠 | タイマICの電源 |
緑枠 | タイマIC「NE555」とその周辺部品 |
青枠 | モータへの出力端子 |
紫枠 | MOSFETとその周辺部品 |
黄色枠 | モータ駆動用の別電源 |
赤枠から5Vが供給されタイマIC「NE555」が駆動します。緑枠のタイマICと結線されている部品(抵抗・可変抵抗・コンデンサ)はタイマICから矩形波(方形波)を出力するために必要になります。紫枠はスイッチング素子のMOSFETで、モータの駆動に用います。黄色枠はモータに供給される電源で、青枠のコネクタから出力されます。
矩形波(方形波)とは?
矩形波(方形波)とは下図のようにHIGH(5V)とLOW(0V)を周期的に繰り返す波形(黒線)のことを言います。因みに「HIGH」出力の電圧値はマイコンやICの電源電圧に依存します。今回はタイマICがこの形の波形を出力(発振)するような回路構成になっています。
MOSFETとは?
紫枠のところで出てきたMOSFETはゲート(入力)の電圧値に連動してドレインソース間(出力)に電流を流します。ゲート(入力)にしきい値電圧が設定されており、しきい値電圧以上の電圧がゲート(入力)に加わると、ドレインソース間(出力)に電流が流れモータが回ります。
MOSFETのドレインソース間(出力)を下図のスイッチに、ゲート(入力)を少年に置き換えてみます。ゲート(入力)にしきい値以下の電圧が加わる状態を「LOW」とした時、少年が「指をくわえて待っている状態」を指し、スイッチは「OFF」になります。スイッチが「OFF」になると回路上にループがなくなるため、電流が回路上を流れることはありません。もちろんモータにも電流が流れないのでモータが回ることもありません。
一方でゲート(入力)にしきい値以上の電圧が加わると、少年はアクティブ(HIGH)状態になりスイッチを押して、スイッチは「ON」になります。「ON」になると回路上にループができ、電流が流れます。そして、モータにも電流が流れるためモータは回転します。
ゲート(入力)に先程紹介した矩形波(方形波)を加えると高速で追従し、HIGHの電圧値こそは変わりますが、出力波形に同様の周期の矩形波が表れます。高速でHIGHとLOWの切り替えができるということで、MOSFETはスイッチング素子などと呼ばれます。この高速な切り替えこそがモータの速度を調節できる要因になります。詳しくは次回説明しようと思っています。
ボードレイアウト(PCB document)
上図の様に配線したのですが、ベタ配線が原因で少し見づらいので、ベタ配線を非表示にしたものを下図に示します。赤色線が表(TOP)配線、青色線が裏(BOTTOM)配線になります。
先程の回路図の様にグループ分けしてみるとおおよそ下図のようになります。別電源がボタン電池になっていますが、前回の記事のモータの駆動にはアルカリ電池を用いています(汗)。詳しくは前回の記事をご覧ください。
まとめ
今回はFusion 360のEDA機能で作成したモータドライバの回路図とボードレイアウトをお見せし、回路図を大まかな区分に分けてモータの動作に至るまでの流れを紹介しました。次回はタイマICにより回転スピードを変化させることができる理由とその方法を紹介します。
がさきぬ
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