ここまで自作プリント基板を使用して試作したモータドライバの概要について紹介してきました。今回は、モータの回転スピードの制御方法について書いていきます。
前々回の記事:タイマICで可変速モータドライバを作る(その1)
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PWM制御
PWMはパルス幅変調(Pulse Width Modulation)の略記です。ここでいうパルス(波形)を前回紹介した矩形波(方形波)とします。パルス幅とは下図の様にパルス(波形)の「立ち上がり」から「立ち下がり」までの長さを指します。そして、パルス幅変調とはパルス幅を変化させることをいいます。
では、パルス幅を変えると何が起こるのでしょうか。以下の3つのパターンで検証してみます。一番上から波形①、波形②、波形③とします。黄色でパルス(波形)の波長(1周期分の長さ)を示します。波形①のパルス幅は波長のおよそ半分(1/2)、波形②のパルス幅は波長のおよそ1/4、波形③のパルス幅は波長のおよそ3/4になります。
波形①
波形②
波形③
この波形① ~ ③をMOSFET(前回の記事で紹介しました)のゲート(入力)に加えた時を考えます。モータもパルスのHIGHとLOWに連動して「回る⇒止まる」を繰り返すように思えますが、タイマICが出力する波形の周期の単位はマイクロ秒(1秒の100万分の1)と極めて短いため、「回る⇒止まる」の動作を実際に目では観測できず、モータは連続的に回ります。しかし、波形① ~ ③を加えた時に全く変化がないわけではなく、モータに加わる電圧が変化します。
波形①
波形②
波形③
モータが疑似的にアナログ(連続)的な動作をするとして、矩形波を平均化(緑線)します。
HIGHの状態での電圧(ここでは5[V]とします)に「パルス幅が波長を占有している割合い(デューティ比などと呼ばれます)」をかけてやります。
波形①:疑似アナログ = 5 × 1/2 = 2.5[V]
波形②:疑似アナログ = 5 × 1/4 = 1.25[V]
波形③:疑似アナログ = 5 × 3/4 = 3.75[V]
という様になります。
モータの回転スピードは印加された電圧に比例します。従って上記のPWM(パルス幅変調)を行うことによってモータに加わる電圧を自在に降圧(電圧を減少)させることができます。つまりPWM(パルス幅変調)制御でモータの回転スピードの上昇は不可能ですが、回転スピードの下降は可能になります。
まとめ
今回はPWM(パルス幅変調)制御を使ったモータの速度制御について紹介しました。次回はついにタイマICが矩形波を出力するメカニズムを紹介しようと思います。
がさきぬ
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