リチウムイオン電池を充電する電源基板の作成を目標に、Fusion 360のEDA機能を使用してライブラリ・デバイスの作成、回路図設計まで行ってきました。第4回(最終)となる今回は、ボードレイアウト(PCB document)の作成方法を紹介し、最後に基板を3Dモデル化します。

~前回までの流れ~

  1. リチウムイオン電池を充電しよう(その1)
  2. リチウムイオン電池を充電しよう(その2)
  3. リチウムイオン電池を充電しよう(その3)

ボードレイアウト(PCB document)

回路図エディタ(Schematic)のツールバーの一番左にある「Switch to PCB document」を選択すると、ボード図エディタ(PCB document)が生成されます。下図がボード図エディタ(PCB document)です。

下図に「DESIGN」タブのツールバーとそのコマンドを示します。これらを用いて配置・配線まで行っていきます。

上図が部品のフットプリントです。各フットプリントのパッド間が黄色線で結ばれていますが、この線は回路図(その3で作成したもの)でつないだ端子(Pin)と対応しており、部品を配置するとき、ガイドの役割をします。これらを下図の外形線(緑線)で囲まれたエリアに配置していきます。基板外形のサイズはMoveコマンドで変更できます。

黄色のガイド線ができるだけ交差しないように配置するのがコツです。

上図の様に配置・配線しました。上図左が裏側(Bottom)、右が表側(Top)のパターンになります。主に部品配置で使用したコマンドは、Move・Rotate・Infoです。Rotateコマンドはマウスの右クリックでも代用出来ます。Infoコマンドは外径寸法などの正確な値を取りたいときに使います。配置が終わるとRouteコマンドで配線します。今回は電源基板ということなので、Poylgonコマンドを用いてベタ配線をしました。

ベタ配線とは?

 Routeコマンドで配線したパターンは抵抗値を保有し、その抵抗は配線抵抗などと呼ばれます。配線抵抗に電流が流れると、通常の抵抗と同様に電圧降下が生じます。電圧降下は以下の式で表されます。

“電圧降下 = 電流 × 抵抗値”

上式をみると、電源電圧の減少分(電圧降下)は抵抗値に比例することが分かります。本来の目的(LEDの点灯・モータの駆動・マイコンへの電源供給など)と異なり、エネルギを失うことになるため、電圧降下の発生は電源系統には好ましくありません。従って抵抗値を減少させる対策を取ります。抵抗値は次式で表されます。

“抵抗値 = 抵抗率 × 長さ ÷ 断面積”

上式をみると、抵抗値が長さに比例し、断面積に反比例することが分かります。配線抵抗を小さくするための方法の一つとして、断面積を大きくする方法があります。つまり、配線幅を太くするほど配線抵抗は小さくなります。そして、配線幅を太くする方法としてベタ配線があります。基板上をPolygonコマンドで囲い、囲われた部分を塗りつぶし、配線幅を基板面積ギリギリまで大きくします。従って、電源系統の配線にベタ配線を用いると配線抵抗が減少し、配線抵抗が原因となる無駄なエネルギ損失の軽減が図れます。

DRCについて

 ボードレイアウト(PCB document)にも回路図(Schematic)のERCと同様にDRC(Design rule check)というものがあります。(ERCについては前回の記事:リチウムイオン電池を充電しよう(その3)をご覧ください。)DRCについては設定項目が多く、複雑なので今回は割愛します。

View 3D PCB

 ここまで作成することで基板をついに3Dモデルで見ることができます。

簡単に3Dモデルを出力できるのはFusion 360の素晴らしい機能だと思います。

これまで第4回に渡って、Fusion 360のEDA機能を用いてリチウムイオン電池の充電用基板を設計してきました。Fusion 360は3Dモデルも含めて、手軽に簡単に、基板設計ができるツールだと思います。ぜひ皆さんも挑戦してみてはいかがでしょうか!

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がさきぬ

今年度から高専3年生になります.今年度の目標は基板の製作と学業の両立,電検取得です. 頑張るぞい.